活動内容
Activity

「日本とイタリアの教育と美術」開催報告

2015.07.06

シエナ美術館における日伊交流教育美術展
「日本とイタリアの教育と美術」開催報告
【併設】2016年日伊修好150周年を見据える「日本美術シエナ市収蔵記念展」

2015年5月15日 初日 開会式

翌2016年の日本とイタリアの修好150年に先駆け、去る5月15日から19日まで開催された「日本とイタリアの教育と美術」と称するシエナ美術館における日伊交流教育美術展が開催された。  
  
シエナはイタリアにおける初期ルネサンスの都市として知られ、ルネサンスの初期と盛期を繋いだとされるドゥッチオやシモーネ・マルティーニなど著名な美術家を輩出し、後にフィレンツェにおける盛期ルネサンスの礎となった芸術都市であることは言うまでもない。 

一例を挙げれば、シエナの彫刻家ヤコポ・デッラ・クエルチャの作品はルネサンスの巨匠と謳われるレオナルド・ダ・ヴィンチさえも、彼の作品を模範としていた、と有名な「美術家列伝」に記述されている。

そのほかベッカフーミなどもシエナ派の美術家として世界に名を馳せており、この芸術の聖地シエナにおける日本美術作品の展示は日本の美術家にとって大いに誇れるものと感じ得る。 

更に、この美術交流において最も重要な部分を占める美術教育の人的活動として、サンタ・マリア・デッラ・スカラ救済院にて開催されたアートセッションでは日本の美術家とシエナの子供たちによって果たされた。
 

赤尾信敏WAC最高顧問による開会挨拶

シエナ市文化評議員マッシモ・ヴェトヴェッリ氏より祝辞を賜る

プリズマ・マルチメディア協会会長(創設者)  ダニエリ・サッソン氏を通じてシエナ美術館作品収蔵目録を手渡す

日本美術家によるパフォーマンス

パフォーマンスに集まるシエナの美術家など

2015年5月16日 二日目 アートセッション

シエナの子供たちとのアートセッションは言葉の壁を越えて、美術によって交流された。作画中の日本美術家と子供たちは通訳を介さずとも互いの筆によって美術という音を発しない言葉を生み出し、終始大人も子供も黙々と描きながらも絵で会話をしていたように感じられた。
作画のテーマは「仲間」や「友達」として50名以上の子供たちが3組に分かれて凡そ2メートル四方の模造紙に協力して描いた。それぞれの個性がぶつかり合いながら、色の融合が次第に協和されてゆく光景は非常に面白く、仕上がった作品は色彩豊かでダイナミックなものとなり、美術というものが心の交流のための重要なアイテムであると改めて感じられた。

こいのぼりの歌を唄い作画する日本美術家

アートセッション作画風景

作品完成に歓声をあげる子供たち

ペトリオーリ博士解説による美術館巡り

美術展のほか、現地渡航をした日本の美術家にはピエールジャコモ・ペトリオーリ博士によるルネサンス時代を彩った美術作品の解説を伴う美術鑑賞が実施された。

初日(2015年5月15日)

シエナ美術館において、アンブロージョ・ロレンツェッティの壁画に見る当時の政治的背景やシエナとフィレンツェの関係なども踏まえ、美術史の教授らしい解説となった。

シエナ美術館常設展示、壁画を鑑賞

三日目(2015年5月17日)

場所はフィレンツェに変わり、フィレンツェ最大級の美術館における作品鑑賞が行われた。
ここではシエナ派、フィレンツェ派のみならず色彩のルネサンスとも言われたヴェネツィア派など、多くの都市で起こった各時代のルネサンス作品群を順に鑑賞し、その時代の美術作品の解説が行われた。
特に入り口付近にあったドゥッチオやシモーネ・マルティーニはシエナ派を代表する美術家であり、博士の解説も多弁となっていたように記憶している。  

次にアカデミア美術館では、言わずと知れたミケランジェロのダビデ像を鑑賞。
ダビデの表情は左右から見て表情が変わり、我々が知るダビデ像は左から見た構図で、その様相は若く強い英雄の横顔が見られるが、一方右から見た構図に見る表情は少し女性的であることに、この彫像の面白味があるとのこと。

最後はピッティ宮殿。
内部に陳列された作品群はウフィツィをも凌ぐ勢いが感じられる。  
やはりウフィツィ同様に各時代のルネサンス作品が展示され、絢爛豪華な宮殿内狭しと並ぶ作品は圧巻。
当時、繁栄を極めたメディチ家の強大な政治力が色濃く現れている。 

最後にこの美術交流の意義を申し上げれば、子供への美術教育が導く平和への道標は美術家という文化人が打ち立てるということ。是非、今後も国際的活動に邁進して頂きたい。

フィレンツェ・ウフィツィ美術館(17日)

アカデミア美術館
ダビデ像(17日)

アカデミア美術館
ダビデ像(17日)

アカデミア美術館
ダビデ像(17日)

会期

2015年5月15日(金)~19日(火) 

会場

シエナ美術館 

主催

一般社団法人世界芸術文化会(東京本部) 

監修

世界芸術文化交流会イタリア支局長 ピエールジャコモ・ペトリオーリ博士(オレゴン州立大学芸術学部美術史教授/元フィレンツェ大学美術史教授) 

後援

在イタリア日本国大使館 

協力

シエナ市/シエナ美術館/カゼリ高等学校/聖マリア・デッラ・スカラ救済院  
運営:株式会社フィネス(WACより運営を委譲) 

広報

bun-ten(株式会社フィネス発行教育美術誌)