一般社団法人 藝文協会(芸文協会)

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活動内容 activity

日伊芸術の伝統と現代

世界遺産イタリア・シエナにおける美術展覧会

日伊芸術の伝統と現代

3月11日-12日

9:00
成田空港よりローマ・フィウミチーノ空港へと降り立った日本美術家一行。翌日よりローマ市内の世界遺産区域を見学しながら、トスカーナ州シエナ市へと向う。イタリア美術といえばローマやフィレンツェの盛期ルネサンスばかりが想起されがちだが、かつてシエナを起点としたシエナ派は、レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロを擁したフィレンツェ派と双璧を成したと言われている。その後期ゴシック様式を汲む独特のスタイルは、自然な表現を求めたフィレンツェ派と対峙するかのように装飾的で非現実的な色彩感性に彩られ、非常に神秘的な空間を構築する。
一方、街並は昔ながらのイタリアの風景をよく留めており、ギリシャ風やビザンチン風の風情を留めるドゥオーモや宮殿が16世紀以前の姿のまま聳えている。伝統の技法や表現背景を持つ日本美術家の面々との交流を結ぶには、最も相応しい町と言えるだろう。

3月13日

本展会場のマガジンディザーレは、シエナ美術館の地下1階2階に位置する。カンポ広場に位置する好立地ということもあってか、初日より多くの来場者が足を運んだ。特に観光地として世界的な知名度を誇るため、修学旅行の学生や美術大学の学生の姿も多く、会場は早くも国際交流の色合いを強めていた。

会場となったシエナ市立美術館

プブリコ宮殿(世界遺産)内を利用した会場風景

 


チバイ氏(右)へ弊社代表(左)
からシティーキーの贈呈

 

赤塚暁月氏による揮毫

 

シエナ市立美術館にてペトリオリ博士の
解説に耳を傾ける美術家一行

 

17:00
夕刻、カンポ広場の青空も夕陽に染まる時分、プブリコ宮殿内の「日伊芸術の伝統と現代」会場にて本展のオープニングセレモニーが開かれた。会場にはシエナ市美術館館長チバイ氏、フィレンツェ大学教授ピエールジャコモ・ペトリオリ博士、シエナ子ども美術館館長ミッチェリーナ・シモナ・エレミータ氏らシエナの美術界を代表する面々が参席。和装やフォーマルに襟元を固くした日本美術家の面々も、イタリア人らしい明るく大らかな気質に触れ、次第に心から打ち解けていった。彼らはチバイ氏より記念のシティキーを贈呈されると、微笑んでそれに応えたのが印象的だった。会場には多くのメディアも足を運んだが、特に彼らのレンズを独占したのは、書道家赤塚暁月氏による揮毫の風景だった。今でこそ珍しくないアート・パフォーマンスだが、舞台ではない伝統芸術がほぼ即興にて展開される様子は、芸術の都に住むイタリア人にとっても非常に新鮮だったのだろう。赤塚氏は一身に注目を集める中、「愛馬」と表した。これは平和と交流の象徴としての「愛」に、カンポ広場にちなんで「馬」を即興で合わせたものである。(※カンポ広場では年2回パリオと呼ばれる馬追い祭が開かれる)
さらにプブリコ宮殿ベランダにてレセプションパーティが催され、その後シエナ市美術館を表敬訪問した。ここにはシモーネ・マルティーニのフレスコ画「荘厳の聖母」や「モンテマッシの攻略に向かうグイドリッチョ・フォリアーノ」アンブロジョ・ロレンゼェッティの描いた名画「良き政府と良き政府の効果」「悪しき政府と悪しき政府の効果」などシエナ派を代表する画家の傑作が所狭しと展示されている。
シエナ派の作品は大作が多く、また保存状態の維持が難しいことから国外での展示は困難で、残念ながら日本人には馴染みが薄い。日本美術家たちは、当館の学芸員も務めるペトリオリ博士の解説に耳を傾けつつ、改めて実感したイタリア美術のスケールの大きさに感嘆するほか無かった。

3月14日

宮澤玉瑛氏による即席の書道教室

 

10:00
日本美術家とシエナの子どもたちによる交流会が、シエナ子ども美術館にて催された。
朝早くにも関わらず大勢の子どもたちと、その保護者やギャラリーが注目する中、まず書道家の宮澤玉瑛氏が揮毫の筆を執った。
昨日のセレモニーとは異なる面々に配慮して、流麗なかな文字を丁寧に書していく。
更に即興で「友」と表した。こちらは漢字による1字書である。もしかしたら今日初めて日本語を目にするかもしれない人たちへの配慮が随所に窺える作品だ。続けて宮澤氏は、子どもたちを相手に即席の書道教室を開催した。テーマは「明」の1字で、漢字になれないイタリア人にもわかりやすい象形文字の解説から、書し方のイロハまでを指導された。そのほか、会場では折り紙がプレゼントされた。日本美術家が折鶴の作り方を教えると、子どもたちは真剣な面持ちで彼らの指先を見つめ、見よう見まねでそれに倣った。
その後、会場フロアを埋め尽くさんばかりの大型の画用紙が用意され、日伊合同作品制作が行われた。テーマは「春-spring」。手本も下書きも無いが、子どもたちは筆を絵具に浸けると、即座に画用紙の上へと走らせた。その隙間を縫うように、美術家たちも作品制作に参加していく。子どもたちは不意に筆先から絵具を垂らしてみたり、飛沫を飛ばしてみたりと、予想外の作風(?)で美術家の目を驚かせた。

子供たちとの合同制作風景

 

13:00
世界遺産にも登録されているシエナ県内のサン・ジミニャーノ歴史地区を見学。324mの丘の上に聳える小さな町だが、大小さまざまな塔が72も建っており、最大のものは50mにも及ぶ。かつての繁栄がいかばかりのものであったか、石畳を踏み締めつつ太古の時代へと思いを馳せた。

3月15日

10:00
ペトリオリ博士が教鞭を執るフィレンツェの街並を見学。近代式美術館の中では最も歴史の古いウフィツィ美術館では盛期ルネサンスをはじめとする現代のイタリアを構築した芸術文化を学んだ。日本人にも馴染みの深い「プリマヴェーラ」※1「ビーナスの誕生」※2「受胎告知」※3などイタリアが誇る名画の数々に、ただただ息を呑むばかりだった。更に特別な計らいにより、「ヴァザーリの回廊」へと通された(ここを設計したのはジョルジョ・ヴァザーリ自身である。またここにはヴァザーリをはじめとする有名な肖像画のコレクションが並び、名物となっている。完全予約制)。回廊をはじめ館内は一昨日に続きペトリオリ博士が解説くださった(ちなみに博士の研究テーマもヴァザーリと彼の執筆した「美術家列伝」を軸としている)。その後は聖母教会ドゥオーモ、ヴェッキオ宮殿などに面する市の中心シニョーリア広場、“イタリア栄光のパンテオン”サンタ・クローチェ聖堂へと足を運んだ。

3月16日-17日

フィレンツェ空港よりローマ・フィウミチーノ空港を経由して成田空港へ。

展覧会を終えて

今回は初のイタリア展覧会となったが、メディアからの注目も高く、日本とイタリア両国間の美術による社会教育というテーマについて大きな1歩を踏み出したことを参加者全員が確信したことと思われる。早くも翌年以降の開催に向けての要望も寄せられており、日伊芸術交流の動きはより活発に、そして確固たるものへと発展していくことだろう。

※1 ※2 サンドロ・ボッティチェリ作
※3 レオナルド・ダ・ヴィンチ サンドロ・ボッティチェリ作

共 催: WAC(世界芸術文化交流会)
後 援: シエナ市
財団法人日伊協会
国連NPO法人国際児童基金
シエナ市立子供美術館
パスコリ小学校

会期:2009年3月11日(水)~14日(金)
会場:シエナ市立美術館(イタリア・シエナ)

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